おいしい県立 白メシ学園|箸は剣よりも強し!青年よ茶碗を抱け!

米総合学部

お米のことを徹底的にライススタディする米総合学部。
お米にまつわるウワサや知って得する情報など、幅広い白メシ知識を習得します。

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白メシ学園的米作りの88手間・第7話 ~ 番外編~

1.はじめに

「米」という漢字が八十八という字を組み合わせてつくられているのは、白メシになるまでに88回の手間がかかるから。という由来を検証するために、1年間をとおして米づくりの工程を学ぶ実習レポート。今回は番外編です。

2. ランニング+農業=“藁まるけ”マラソン

お手伝いに行っている農家さんが、突如、地元を盛り上げるべく、地域密着型のマラソン大会を企画しました。その名も「藁まるけマラソン」。稲刈り後の稲藁の束を集め、まとめて結束させる=藁をまるける(丸める)という農作業が取り入れられた、障害物レースのようなマラソン大会です。

▲まるけた藁の山

棚田が広がる、なかなか高低差のある山道を10kmちょっと走り、途中の田んぼで藁をまるけるというもの。そこそこ距離もあるなかで、未知の「藁まるけ」を行う想像がつきません。やってみるしかないようです。

スタートの号砲は、農業用のスズメ脅しの手筒。これでスズメが逃げるとは思えないほど軽やかな音が響くなかのスタートとなりました。

山頂にある小学校までは5kmほど。地域の人の応援を受け、ひたすら登ります。

折り返し地点でもある小学校の校庭が給水所。校長先生には許可取得済みとのことで、農家さんの本気度が伝わってきます。給水を用意してくれたスタッフも、道案内のボランティアも、すべて地域の皆さんの協力によるものでした。地域活性化のちから!

校庭を一周したら、後半のコースは急勾配の下り。上りもつらいが、下りも足に来ます。開けた斜面に田んぼが広がり、いよいよ「藁まるけ」のポイントです。

▲平均勾配12%はまだまだ序の口で、後半はさらに急坂に
▲棚田のなかでも地域の方が応援してくれました

まずは農家さんによる「藁まるけ」のレクチャーから。収穫後の田んぼに落ちている、麻紐でくくられた稲藁の束を8束集め、根元と穂先が交互になるように重ねたら、畳の縁(へり)で縛ります。この縁は畳店を営む知り合いから譲ってもらっているそうで、エンドレスで大袋から出てきます。

▲このような畳の縁が次々と大量に出てきます。こちらはそのごく一部

では、農家さんの実際のレクチャーをご覧ください。

実践してみると、相変わらず稲のガラス質が手足に刺さって痛いのなんの。素肌を出しまくりのランニング用の服装は農作業に向かないと実感しました。

▲素足の膝で藁束を抑えるのがまたつらい

そしてなにより、畳の縁をギュッと締める作業が全身運動でマラソンより疲れる。一人10個の「藁まるけ」がノルマでしたが、次第に握力がなくなってきて意識も朦朧とし、自分が何個制作したのかよくわからなくなってきました。

また、早く到着したランナーは早々に10個制作しても、ほかに「藁まるけ」で苦しんでいる仲間がいると、思わず手伝ってしまう。結果、「全員で一反の田んぼ全ての稲束を片付ける」という団結力が生まれ、全ての藁が片付きました。一人あたり20個ほど。今思えば、これが農家さんの思惑だったのでしょう。

この稲束は、ブルーベリー農家さんの冬の畑の防寒対策として、敷き藁に使われるとのこと。まさに今流行りのSDGsです。

白メシ学園的88工程
その71:「藁まるけ」で参加者の絆を強化

その72:まるけた藁の再利用によるSDGsで意識高い系学生の気分に

なお、続々と出てくる畳の縁にはさまざまな模様があることも実感し、畳の奥深さも知ることができました。

「藁まるけ」が終わったら、再び不安になるほど急坂を下ってゴール。ゴールテープも畳の縁(こちらは新品)。持ち手は地区の子どもたち。どこまでも地域の温かさとゆるさを感じるマラソン大会でした。

優勝カップは長野県の伝統工芸・松代焼を手がける地域の陶苑で特注したトルコブルーの陶器。費用を聞いたらなかなかな高額だったうえに、陶工さんは納得がいく出来栄えになるまで6回ほど作り直したそう。

農家さんだけでなく陶工さんの本気度も伝わるこのカップは優勝者が1年間保管し、次年度の大会時に持参して、次の優勝者へと受け継がれていくそうです。つまり、優勝した場合は翌年の大会参加が必須と判明しました。

▲これがトルコブルーの優勝カップだ!

そして、思いのほか「藁まるけ」の作業が効率的に進んだことに気をよくした農家さんは「来年はまるける藁を増やすか」とのことで、それならばせめて距離を短くしてもらえるよう懇願した次第です。

ゴール後は、農家さんのお宅で新米のおにぎりのふるまい。このおいしさが感動的なこと! 塩加減、握り具合、米の粒の立ち具合、全てがパーフェクト。作り方のコツを聞いたところ「普通のことしかやってないから」とのことで、その普通を教えてほしかったのですが、企業ならぬ農家秘密のようでした。

ちなみに皆で囲んだ食卓台は、地域で余っていた古い卓球台。ネットを張れば、実際に卓球もできます。どこまでもSDGs。

3. ぬかるんだ田んぼで稲の手刈り

マラソン大会を応援してくれていた地域の農家さんの一人が、田んぼの水抜きがうまくいかないためにコンバインでの稲刈りができず、収穫を諦めたとのこと。手塩にかけて育ててきたのにもったいない! とのことで、マラソン参加者で手刈りのお手伝いにいきました。

すると、想像以上のぬかるみにびっくり。膝丈の長靴のほとんどが埋まり、それを引き抜くだけで多大な労力を使います。

▲刈った稲を田んぼの外に運ぼうにも、運搬機のキャタピラすら泥に埋まる

しかし、とにかく手で刈り取るしかない。刈り終えた稲の株部分を足場に進み、どこからか見つけてきた板の上に乗ったり、脱穀機で細かく刻まれた藁を敷いたりと、各自工夫をしながらなんとか1日かけて稲刈りを終えることができました。

▲板が一枚しかないと泥の海を進めず、孤島のようになります
▲転んで泥だらけになる友人たちを見て思い出したのは、伝説のバラエティ番組「風雲! たけし城」でした(昭和)

白メシ学園的88工程
その73:水はけの悪い田んぼも諦めず稲を手刈り

その74:「藁まるけ」とは違った肉体労働で水の管理の重要性を痛感する

▲この田で600kgの米が収穫できたようです

なお、「藁まるけ」もマラソン時だけでは終わりません。別の田んぼの藁をまるけていると、稲束の下から、冬眠をはじめたばかりのヒキガエルが出てきました。晩秋の風情が漂っていました。

▲せっかくの冬眠から起こしてごめん…

白メシ学園的88工程
その75: 冬眠のカエルから迫る冬の訪れを感じて妙に焦る

4.所感

「藁まるけ」は心身の多大な疲弊に対して収穫の喜びがないぶん、気力を奮い起こして取り組む必要がありますが、終わったときの達成感も疲労感も格別でした。

そして、稲の手刈りをお手伝いした農家さんからは「米のありがたみがわかるでしょ」と声をかけられましたが、そもそも水の管理をきちんとしていたらしなくてよい苦労だったのでは…とは言えませんでした。でも、米のありがたみは常に十分実感しています。

担当教員より/

今回こそ新米の白メシが研究室に届くのでは、と思いましたが、まだまだ手間がかかるようですね。ところで「まるける」は長野県の方言ですが、調べると新潟県や山梨県から東海地方まで広く使用されているようです。今度、他県で使ってみたいと思います。

評価:米米藁丸米米