おいしい県立 白メシ学園|箸は剣よりも強し!青年よ茶碗を抱け!

米総合学部

お米のことを徹底的にライススタディする米総合学部。
お米にまつわるウワサや知って得する情報など、幅広い白メシ知識を習得します。

米総合学部

新米の食べ比べで産地を当てることはできるのか。〜コシヒカリを通じた人間の味覚感度の考察〜

1.はじめに

4月から米農家さんのもとで米作りに勤しんでいたら、すっかり足腰が鍛えられた。そこで、さまざまなスポーツ大会に出場してみたところ、思いのほか入賞を果たすことができた。やればできる!

賞品は各地の新米であった。収穫期になると続々と送られてきた名産地の新米を一人で食べるのはもったいない。そして、味の違いがわかる自信がない…。

世の中の人は、この違いがわかるものだろうか。級友たちに実験してみることにした。

2.産地別の特徴を紹介

贈呈されたのは、以下の4つの産地の米である。いずれもコシヒカリだ。説明文および味わいは、インターネット検索の情報をまとめたものである。

1) 野沢温泉村「橅(ブナ)の水」(特別栽培米)
巨大なブナ林が広がる野沢温泉村の野沢農産生産組合が栽培方法、肥料にこだわった米。長野県の「環境にやさしい農産物」認証で、できる限り化学肥料・農薬を使用せずに栽培。令和2年11月に皇室で執り行われた新嘗祭でこのお米が献上された。日本に7人しかいない「ダイヤモンド褒章」受賞農家の逸品。

味わい:
ぷっくりと厚みのある粒感で、噛みごこちがよい。甘みはさっぱりとしており、すっきりとした後味。

出場した大会:
2022年10月上旬、野沢温泉村で開催されたトレイルラン大会「Nozawa Spa Trail Race」に出場した。「初心者歓迎」の謳い文句に惹かれて出走したが、だまされたと感じるほど過酷なレースであった。実際、優勝者の尾藤朋美選手(サハラ砂漠250kmマラソン準優勝者)も「初心者向けの大会ではない」と語っていたほどだ。しかし、図らずも尾藤選手の次点である女子総合2位を受賞した。

その翌日、野沢温泉街から野沢温泉スキー場の山頂にあるゴンドラ終着点までロードバイク(自転車)で登るヒルクライムの大会「野沢温泉自転車祭」に出場し、今度は年代別で2位になった。激しい疲労により、2日連続で大会になんて出るものではないと実感しながら受賞したのが、この米だ。

(2)新潟県佐渡市「朱鷺(トキ)と暮らす郷」(特別栽培米)
佐渡島で2008年から取り組んでいる「生き物を育む」農法(朱鷺のエサとなるドジョウなどが生息できるよう、江(え)=田んぼビオトープを作り、農薬や化学肥料を通常の半分以下に抑えた栽培方法)でエコファーマーが作った米。島の特徴的な気候と土地柄を生かした米作りで、食味ランキングで「特A」評価11年連続取得。

味わい:
炊き上がりの香りがよく、甘みやうまみを感じることができる。コシヒカリの特徴でもある粘りやツヤもしっかりしている。

出場した大会:
9月上旬、佐渡島で行われた佐渡国際トライアスロン大会Bタイプ(スイム2km→バイク佐渡半周108km→ハーフマラソン)に出場した。国内最長距離レースとして知られるAタイプ(スイム4km→バイク佐渡一周190km→フルマラソン)の半分の距離とはいえ、炎天下の猛烈な暑さと想像を絶する疲労で満身創痍の極地。こんなに自分との戦いを感じる一歩が今まであっただろうか。ネット配信を見ていた級友から連絡が来なければ、年代別優勝をしていたことに気づかなかったくらいだ。

ゴール会場で力尽きてしばらくぼんやりしていたら、Aタイプ女子の総合優勝者がゴールした。ゴール後のコメントで「バイクの100km地点で辛すぎて吐いたけど、皆さんの応援のおかげで頑張れました」と聞き、「いや、沿道の応援だけで残り90kmのバイクからフルマラソンは頑張れないだろう」と驚いた。さらにインタビュアーが「来年も出たいですか?」と尋ねるので、なんと酷な質問をするのだと思っていたら(私なら絶対出たくない)「来年も出たいです!」と元気に返答していて心底驚愕した際に受賞したのが、この米だ。

(3)信州大学農学部(南箕輪村)の「低農薬米」
信州大学農学部の学生が手押し式の除草機を使うなど無農薬に近い「低農薬」にこだわって栽培。毎年、実習の一環として栽培されているそうだが、 味わい等の情報についてはインターネット検索をしても全く出てこなかった。

出場した大会:
12月上旬、同大学の授業の一環として行われている「信州大学マラソン」に出場した。一般市民も参加可能とのことで、同大学生たちに負けじと、白メシ学園の名にかけて出走。学生向けのレースということで軽い気持ちで臨んだところ、松本空港周辺(1周約10km)をひたすら周回するコースは遮るものがなにもなく、予想以上にハードなレースだった。ゴール後に順位がわからず帰宅したが、後日、優勝賞品としてこの米が郵送されてきたことで、自分の優勝を知った。

(4)長野市「信里の夜明け」
10月にレポートを提出した「藁まるけマラソン」の参加賞が「信里の夜明け」新米5kgだった。参加するともれなく新米がもらえる大盤振る舞いの大会であった。信里とは地区名であり、長野市南西部に位置する茶臼山の西側斜面に広がるエリアだ。適度な標高と粘土質の土壌で、江戸時代には真田藩の献上米が栽培されていたとか…。実際、現代でも米は地域内外から高く評価されている。

味わい:
粒がしっかりしていて味わい深く、冷めてもうまい。(個人的感想)

3.お米の産地当てクイズを実施

実験の内容は、上記に記した各米の説明文を読み、A〜Dの米がどの産地かを当てるクイズ形式である。炊飯器・研ぎ方・炊き方・分量はすべて統一したが、精米時期と保存方法にバラつきがあることは大目に見ていただきたい(そこが重要だという議論はさておき…)。

被験者数は15人(男性8人・女性7人)。以下のアンケート用紙を用いた。

結果は下記のとおりである。

全問正解者:1人

2問正解者:3人

1問正解者:4人

全問不正解:7人

なんと、ほぼ半数が全問不正解であった。

4.味わいの感想から考察する人間の味覚の確実性

正答率は低くても、それぞれの米に対する感想には統一感が見られるのではないだろうか。そこで、寄せられた味わいの感想も以下にまとめた。

(1) 野沢温泉村「橅(ブナ)の水」(特別栽培米)

・粒がしっかりしていた。
・味が濃い。
・香りがよく、甘い、高級感。
・一番好みのおいしさ。
・粘りが強い。
・香り、ツヤ、粘りを強く感じる。
・粒の固さ、甘さのバランスが取れている。
・噛んでいるうちに甘みが増していく感じで、粘りもあり、おいしかった。一番好み。

(2)新潟県佐渡市「朱鷺(トキ)と暮らす郷」(特別栽培米)

・固い。
・パサついているが、すっきりお茶漬けに合いそう。
・固めで薄味。
・粒が大きい。
・噛みごたえがある。
・野沢温泉産と同様な印象だが、それよりも粘りがある。
・バランスが取れていておいしかった。

(3)信州大学農学部の低農薬米

・水分が多く柔らかかった。
・一番柔らかくて粘り気があった。
・鼻に抜ける香りが芳醇。
・甘みがあっておいしかった。
・今まで嗅いだことのない香り。
・一番香りがしなかった。
・固め、さっぱり、ツヤ少。
・もちっとした食感の噛み心地。
・さっぱりとした味わい。

(4)信里マラソンの参加賞「信里の夜明け」

・一番おいしかった気がする。粒がしっかりしていて。
・一番噛みごたえがあり、さっぱりしていた。
・噛みごたえがあり、お茶漬けが合いそう。
・甘みが他より少ない。
・甘い。
・香りが好き。
・噛みごたえのある食感が好み。さっぱりとした食べやすさ。
・ひと粒ずつしっかりしていた。何にでも合いそう。
・おにぎりにしたら一番おいしそう。
・粒が立っていて、一番おいしかった。

見事なバラバラ具合である。なんだったら真逆の感想も見られ、とても同じ米を食べているとは思えない。人間の味覚の危うさを感じた。

一方で、このわずかな正答率の中でも最も正解者が多かった米が、我らが農家さんが栽培する「信里の夜明け」であった。また、信州大学農学部の低農薬米も比較的正答率が高い傾向が見られた。つまり、このふたつは(良い意味か悪い意味かはさておき)差別化が図れていると考えられる。

5.所感

以前から何を食べてもおいしい筆者は味音痴であることを自覚していたが、本実験の正答率の低さおよび感想の振り幅の広さから、世間一般の人も筆者と同レベルであることに安心感を覚えた。半面、現在、国で品種登録されている「うるち米」は約440品種と考えると、世の中、“違いがわからない男(あるいは女)”が溢れていることには不安も覚えずにはいられない。だが、なかには「どれもおいしくて差がわからなかった」という感想が見られたことを踏まえると、「おいしいならいいじゃないか」という結論に至った次第である。

なお、実はこの実験は筆者の家族にも実施したが、主旨を間違えていたようで、「どれが一番おいしかったか」という感想が寄せられた。結果、「信里の夜明け」が最も人気だったこともお伝えしておきたい。

担当教員より/

2022年らしさを探りましたが見えてきません先月の「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」のレポート(https://shiromeshi.jp/report/general/1123/)に比べ、炊きあがりの米の条件を揃える基準にそもそもの不均衡があるようにも感じますが、おいしいは正義としておきましょう。一番気になっているのは、私のもとに新米が届かなかったことです。

評価:米米貧乏舌米米

参考・引用文献

・美味しいお米の通販サイト【ツナギ】
https://www.tsunagi-japan.co.jp/products/detail.php?product_id=746
・佐渡特選
https://sadotokusen.jp/item-detail/969824
・お米の通販サイト「ごはん彩々」
https://www.gohansaisai.com/fun/entry/detail.html?i=459
・伊那谷ねっとニュース
https://ina-dani.net/topics/detail/?id=38669