おいしい県立 白メシ学園|箸は剣よりも強し!青年よ茶碗を抱け!

米総合学部

お米のことを徹底的にライススタディする米総合学部。
お米にまつわるウワサや知って得する情報など、幅広い白メシ知識を習得します。

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白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~

1.はじめに

「米」という漢字が八十八という字を組み合わせてつくられているのは、白メシになるまでに88回の手間がかかるから。という由来を検証するために、1年間をとおして米づくりの工程を学ぶ実習レポートも3回目。今回も稲作の知られざる世界を探ります。

2.ようやく田植え終了

5月からはじまった田植えも、いよいよ終盤。うるち米の田植えが終わり、最後はもち米です。うるちとはやや離れた田んぼに、時期をずらして植え付けます。うるち米の混入を防ぐためです。

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~

また、通常、苗は発芽不良などに備えて多めに作りますが、今年は育苗も田植えも順調に進んだおかげで、余剰苗がたくさんできてしまいました。もち米も苗を多く作ったことから、余ってはもったいない、ということで、1株あたりの苗を多めに、株と株の間隔もやや狭めに植えていきます。もち米はうるち米に比べて「分げつ(根本から新しい芽が出て茎の数が増えていくこと)」しづらいため、このような植え方ができるそうです。

白メシ学園的88工程
その32:うるち米と離れた田んぼでもち米の田植え
その33:もち米は、苗多め、株間狭めで植えてもOK

なお、田植えは通常2〜3人で行います。 田植え機に乗って田植え作業を行う人と、苗箱を渡す助手です。田植え初心者の学生が任されるのは、もちろん後者の助手。ということで、田植え機の苗が少なくなるまではあぜ道で待機です。手持ち無沙汰なので、かつて養蚕が盛んだった頃の桑畑の名残であろう、野生化した桑の木になる実を食べてみました。「山の畑の桑の実」なんて、童謡『赤とんぼ』の歌詞の世界のようでした。

白メシ学園的88工程
その34:田植え機の助手をしながら野生の桑の実を食べ、童謡『赤とんぼ』の歌詞を回想する

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3.雨乞いの儀式

それにしても、梅雨だというのに全然雨が降りません。田植え時期の雨不足は、米農家にとって死活問題です。そこで、毎年恒例で行われるのが、雨乞いの儀式。農家さん7人のグループで、霊峰・聖山の中腹にある古くからの雨乞いスポット、長野市大岡の「樋知大神社(ひじりだいじんじゃ)」に向かいます。農家さんが「すぐそこ」という雰囲気の話し方をするので、近所の神社に行くつもりで参加したら、なんと30kmも山道を進んだ先でした……(もちろん車ですが、農家グループの会長〈推定80代〉が子どもの頃は歩いて行ったそうです)。

白メシ学園的88工程
その35:雨乞い祈祷のために山深い神社へ

道中、「嫁殺しの池」なる恐ろしい伝説が残るため池を経て、対向車が来ないことを祈りつつ、車1台がやっと通れるほどの林道をひたすら進行。目的地に広がったのは、長野市にこんな場所があったのかと驚くほど秘境感あふれる神社でした。

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~
白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~
白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~

樹齢400〜500年といわれる杉並木に、1ヘクタールものブナ林、繁茂する湿性植物群に、飲めそうなほど透明な水が流れる小川……。霊験あらたかな風情がこのうえなくあふれており、まさにパワースポットのよう。長野市の名勝・天然記念物に指定されているのも納得の神々しさです。

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~

この「樋知大神社」境内の清水「お種池」は絶えず水が湧き、干ばつでも枯れることがなかったことから、古来、かんがいの種池として崇敬されているそうです。

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名勝:お種池
ブナ林の下部の窪地にできた湧水池。年間を通じて水温8~9℃の清水で、池の中に石祠が祀られている。人々は、灌漑の種水として崇敬し、干ばつの時には、大岡ばかりでなく、川中島や篠ノ井、筑北などから人々が来て、石祠の周りを冷水に耐えて歩き、慈雨を願ったと伝えられている。 
(長野市文化財デジタルベースより)

http://bunkazai-nagano.jp/modules/dbsearch/page4770.html

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標高1,150mとあって、30℃超えだった下界の暑さが嘘のような涼しさ。ここで冷水に入るのは修行です。

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~
白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~
白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~

杉並木を抜けて拝殿で祈祷をしたら、後方の本殿の裏にある「お種池」へ。イワナが何匹も泳ぐ池は、水が透明すぎて池底がよく見えるうえ、水面に周囲の風景が映り込み、残念ながら写真ではその美しさが全く伝わりません。

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~

この池の中央の石祠に御神酒を注ぎ、周囲を3回まわりながら棒で池底をつついて水を濁します。雨が降ったときに池の水が濁ることが儀式の由来だそう。池に入る役は、従来、若手農家が務めていたそうですが、高齢化が進み、グループのなかの若手は60代。図らずも、年寄りの冷や水となってしまいました……。

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~
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白メシ学園的88工程
その36:冷水に耐えて池の水を故意に濁す雨乞い祈祷
その37:石祠のまわりを3回まわっても濁り切らないので、何回もまわる羽目に

ちなみに、池底をつつく棒は代々伝わるものかと思いきや、数年前に農家さんが孫のチャンバラのために作ったもので、サイズ感がちょうどよかったことから、以来、毎年この儀式に使用されているそうです。伝統と利便性のハイブリッドです。

こうして無事、雨乞いの儀式も終了。翌日は、なんと長野県が今年初の猛暑日を記録するほどの天気でしたが、夜には久しぶりの降雨に恵まれました。雨乞いの効果があったのでしょうか。

白メシ学園的米作りの88手間・第3話 ~37手間目まで進むの巻~
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4.所感

スマート化が進む農業ですが、まだまだ長年の経験とノウハウによるところが大きいのも事実。さらに、農業用水インフラの整備により、今では雨乞い祈祷を行う農家は少ないようですが、ため池を主な水源とする同地の農家では、今も欠かせない伝統行事のようです。というのは建前で、その後の共同飲食が農家の皆さんのメインの楽しみのようでしたが、こうした文化の継承により、地域の農家の団結が深まるのも実感しました。農家は一日にしてならず。

担当教員より/

現代でも雨乞いの儀式を実際にやっているのは驚きました。そして、もち米とうるち米の田んぼを離して植えるということも初耳でした。調べると、どうやら、もち米とうるち米を近くで同時期に育てると花粉が混じってしまい、劣性(潜性)遺伝子のもち米はうるち米になってしまうそうですね。余談ですが、中学生で習う遺伝の仕組みの用語、かつては「優性・劣性」でしたが、2021年度から「顕性・潜性」に変更されたこともお伝えしておきます。

評価:米雨乞米顕潜米