おいしい県立 白メシ学園|箸は剣よりも強し!青年よ茶碗を抱け!

米総合学部

お米のことを徹底的にライススタディする米総合学部。
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白メシ的 会社訪問レポート
おいしさの7割は炊く前に決まる!?
「炊くまでの匠」に聞く、炊飯前にできること

1.「炊くまで」と「炊き方」、どちらが大事か。

おいしいご飯を食べるために、できることは何でもやってきた。有名なブランド銘柄や高評価の炊飯器もあらかた試している。そろそろできることはやり尽くしたのではないか。そんな思いをこぼした筆者に、友人がさらりと言った。

「ご飯のおいしさは炊くまでに7割が決まる。どんなにいい炊き方をしても、保管がよくない米はおいしくならないらしいよ」

なんと7割とな。これまでの筆者のこだわりは3割にすぎぬと。

聞けば、炊飯前を究める「炊くまでの匠」が長野県のメーカーにいて、「その人なら7割のために何をするべきか教えてくれるはずだ」とのこと。即座にそのメーカー、エムケー精工株式会社に向かった。

エムケー精工は東証スタンダード市場に上場している長野県の有力企業。従業員は902人(2022年4月現在)。主力商品の「ドライブスルー型洗車機」だけでなく、「もちつき機」や「電気せいろ」「黒にんにくメーカー」といった同社のラインナップを聞くと「ニッチ分野」というワードがまず頭に浮かぶ。米関連では、「保冷米びつ」「精米機」「計量米びつ」などを製造している。

そのエムケー精工で40年近く開発部門の部署を歩み、お米関連機器の設計も担当してきたという久保田郁哉さんに話を聞くことができた。

おいしさの7割は炊く前に決まる!?

2.新鮮なまま保管すること、精米後すぐに炊くこと

–米を炊くまでのすべてを究めた「炊くまでの匠」が、ここにいらっしゃると聞いたのですが久保田さんのことですか?

久保田さん:「匠」は聞いたことがありませんが(笑)、社内には私を含めて、そう呼ばれてもおかしくない人間が何人かいますね。ずっと、ご飯を炊くまでの過程を研究してきましたから。

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▲40年近く製品開発の道を歩んできた久保田さん。ホームベーカリーやもちつき機などの設計にも携わってきた

–では匠にお聞きします! ずばり「炊くまで」に大事なことを教えてください!

久保田さん:新鮮な状態で保管すること、そして炊く寸前に精米すること。その2点で、ご飯の味はまったく違います。

–新鮮な状態…。銘柄や炊き方ばかりに気を取られ、これまであまり気にしていませんでした。

久保田さん:保冷米びつで保管すれば、ご飯がぱさつかず、古米特有の臭いも発生しません。米の中の水分をキープできるのと、酸化が押さえられるからなんです。もちろん、保管は玄米の状態です。

–私は直売所で玄米で購入して、その場で精米したお米で満足していました。

久保田さん:お若いのに直売所で精米とは、さすが米を究めようとする学生さんですね。でも、炊く直前に精米すると、さらにおいしいですよ。

3.「炊くまで」のためにそろえるもの、その1「保冷米びつ」

–理想のライス・ライフを求めてここに来ました。何をそろえればいいでしょうか?

久保田さん:まずは保冷米びつです。弊社には農家用の大型から、家庭用の小型までいくつかサイズがありますが、おいしさ優先なら、こまめに買ってきて入れ替えるのが理想ですから、最小単位の5kg用保冷米びつ「RICE COOL」がおすすめです。

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▲久保田さんおすすめの保冷米びつ(右)と精米機(左)。キッチンのインテリアになじむようデザインされ、カラーも選べる

–保冷できる米びつがあるんですね…。あ、そしておしゃれですね。

久保田さん:でしょ。家庭の台所に置いてもらえるように、置く面積を小さくしたり、スタイリッシュにしたり、あと電気代を抑えたりして、改良を重ねてきたんですよ。

–冷蔵庫ではダメなんですか?

久保田さん:まあダメではありませんが、いくつか問題があります。一つ目は、米は5kgや10kg単位で買ってくることが多いから、場所を取ってしまうこと。二つ目に、冷蔵庫は湿度が下がりやすいこと。三つ目に、他の食べ物の匂いがついてしまうこと。

–確かに、10kgの米を常時、冷蔵庫に入れておいたら母親に怒られそうです。そして、湿度も影響するんですね。

久保田さん:弊社のRICE COOLは温度15度前後、湿度は60%台に保っています。水分などのデータだけでなく、食味検査も重ねて最適な温度、湿度を割り出しています。

–測って、食べて、なんですね。それは信用できる!

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▲保冷、保湿のため蓋の部分はすべてパッキンで密封され、米を出し入れするタイミング以外は外気に触れない仕様になっている

4.「炊くまで」のためにそろえるもの、その2「精米機」

–もう一点、ありましたよね。保冷保管と…。

久保田さん:炊く直前の精米ね!弊社の精米機は何種類かありますが、この「RICELON」が最小で邪魔にならないし、「割れ米」も少なくておすすめです。

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▲「ペットボトルほどの大きさに」というコンセプトのもと設計された

–これはスタイリッシュですね。母も喜んで置いてくれそう。「割れ米」ってなんですか?

久保田さん:その名のとおり、割れた米です。割れ米が多いと味が落ちるので、できるだけ避ける必要があります。普通の精米機は金属の容器にぶつけたりして「ぬか」を剥がしますが、この小型精米機は米同士を摩擦させて「ぬか」を剥ぎ取るので、割れ米が少ないんです。そして、胚芽を残す精米も可能です。

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▲丁寧に仕組みを教えてくれる久保田さん。入社以来ずっと開発畑という社員は同社でも少ないそう

–胚芽を残すってことは栄養も満点ってことですね。これは俄然、手に入れたい気持ちになってきました。ちなみに、保冷米びつと精米機はおいくらなんでしょう?

久保田さん:販売店によって少し値段が違いますが、2合の小型精米機は1.5万円弱、5kg用の保冷米びつは3万円前後ですね。

–バイトをせず米の道に学生生活を捧げる私には、両方を同時に手に入れるのは難しそうだ…。ひとまず精米機を購入して、保冷米びつは両親に必要性をプレゼンして買ってもらおう。

久保田:ちなみに究極はこちらの精米機能付き保冷米びつです。その名のとおりオールインワン。9万円台かな。

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▲オールインワンだけあって、幅300×奥575×高895mmとサイズは少し大きめ

–ぐ!夢の機械!

久保田さん:本当に米が好きなんですね(笑)。そう言えば、米粉パン専用のホームベーカリーなんてものを昔つくったのを思い出しました。見た目はパンでも米の味なので、タラコとかイクラを乗せるとおいしくてね。

–めちゃくちゃ興味あります!

久保田さん:残念ながら、廃番になっちゃいました(笑)

–なんてこった…。でも、久保田さんと話していると、いくらでも米にまつわるお話が聞けそうな気がします。そんな久保田さんの次の目標はなんですか?

久保田さん:炊飯器をつくってみたいですね。保管から精米、そして炊飯まで、そして最高のご飯が食べられる。

–それはぜひ実現してほしいです。楽しいお話ありがとうございました!

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▲保冷米びつ開発時の最初の設計メモ。ここからデザイナーなどと一緒に試作を繰り返し商品化する

5.精米してすぐ炊いてみた

匠の話を聞いたその日のうちに、エムケー精工の小型精米機「RICELON」をネットで注文。翌日には手元に届いた。

玄米をJAの直売所で購入し、そのままRICELONに入れるだけ。2合なら約3分で精米終了だ。手間はほんのわずか。あとは普段どおり炊くだけ。

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炊けた! 香りから違うと感じるのはプラシーボ効果か!?

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米の味を楽しむため、おかずは最小限で試食。
(もぐもぐ)

控えめに言って最高でした。7月なのに新米じゃないですか、これ。
米は炊く前が7割、本当にそうかもしれない。

一年中、新米の味わいをぜひ。

ちなみに、冷蔵庫で玄米を保冷保管しようと思ったら無理だった。3kgですらスペースを確保できず。やはり、保冷米びつをわが家に導入するよう、両親にプレゼンしよう。

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(了)

【担当教員より】
夏休みにまた一つ大きくなりましたね。ちなみに「プレゼン」と何度か出てきましたが、人はそれを「おねだり」と呼びます。

評価:米米保冷精米炊飯白飯