おいしい県立 白メシ学園|箸は剣よりも強し!青年よ茶碗を抱け!

米総合学部

お米のことを徹底的にライススタディする米総合学部。
お米にまつわるウワサや知って得する情報など、幅広い白メシ知識を習得します。

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白メシ学園的米作りの88手間・第5話 ~ 57手間目まで進むの巻~

1.はじめに

「米」という漢字が八十八という字を組み合わせてつくられているのは、白メシになるまでに88回の手間がかかるから。という由来を検証するために、1年間をとおして米づくりの工程を学ぶ実習レポートの5回目です。いよいよ収穫の秋目前。相変わらず、水の管理と雑草、さらには野生動物との戦いです。

2.緻密な水の管理

稲の生育や品質に大きく影響する田んぼの水管理。真夏には田の水を抜いて土を乾かす「中干し」を行います。これによって稲が倒れにくくなり、土中の有害物質の発生が抑えられ、根の活力が増し、地面が固くなって稲刈り時に作業をしやすくなるという一石四鳥的効果が得られるのだとか。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲地面にヒビが入るほど乾かす「中干し」

それにしても、田んぼの取水&排水構造が見事です。絶妙に口径の異なる塩ビ管を重ね、希望の水位に調整したり、入水や止水をしたりするのです。農家さんの知恵に脱帽です。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲水路につなげた塩ビ管の縁まで水が貯まると止まる仕組み。途中で止水したい場合は棒状の塩ビ管をはめればOK

白メシ学園的88工程

その49:まめな水の管理で稲の生育を促進 
その50:巧妙な塩ビ管使いで水量を調整

3.終わらない雑草との戦い

続く作業は、田んぼの中に生えた雑草の駆除です。所有者の高齢化に伴って譲り受けた遊休農地は、荒れ地だった結果、除草剤が効ききらず、ところどころにヒエやクサネムという雑草が生えてしまいました。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲クサネム。サヤの中の種が地表に落ちると翌年さらに増殖して厄介

いずれの雑草も稲より生育が早く、水分や養分を奪う厄介モノ。稲の根の周りに絶妙に紛れ込み、稲と一体化してのうのうと生えている草を見つけ、ひたすら抜く。あるいは鎌で切ります。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲ところどころに稲ではない草が生えています
白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲群生するクサネムもあります
白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲ひたすら抜くか切るかします
白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲稲をかき分け、このような地表から稲以外のものを見分けるのです

稲の毛や葉が手首や顔に刺さって痛痒いのなんの。苦行のような作業が続きます。なぜ農家の皆さんが手甲をつけているのか、その理由を深く理解できました。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲このような手甲の必要性を痛感

ということで、なんとかきれいになりました。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

白メシ学園的88工程

その51:田んぼの雑草を取り除く苦行
その52:その前に除草剤の散布という作業があったことを知る

続いては除草剤散布後の水管理に失敗し、クサネムが稲を押しのけて大量発生した田の駆除です。まさに繁茂という言葉がぴったり。ひたすら抜くしかありません。盛夏の直射日光も相まって、これまた苦行に次ぐ苦行です。

6:00AM

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

8:00AM

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9:00AM

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

3時間におよぶ作業で軽トラの荷台いっぱいに取れました。実りあるものなら大収穫の図ですが、残念ながら不毛な駆除です…

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

白メシ学園的88工程
その53:繁茂したクサネムの大収穫

稲刈りまでは畦の草刈りも続きます。ちなみに畦に除草剤を使わないのは、雑草の根で畦を強化しているからだそう。これまた昔の人の知恵に感心します。

草刈りBefore

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草刈りAfter

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草刈りbeforeその2

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草刈りAfterその2

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

なお、山間にある田や水はけのよくない水田には、通常の畦だけでなく「中畦(なかあぜ)」という小さな畦もつくられています。これによって排水をスムーズにしたり、山からの冷水の侵入を防いだりするのだとか。そして、稲刈り前はこの中畦の草を刈ることで稲を乾かすそう。これまた昔の人の知恵に感服します。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話
▲中畦と法面の間の排水路に草を落としながら刈っていきます

ところで、今回も作業の様子を上からドローンで撮影していたところ、ご近所の農家さんが集まってきました。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

興味津々の様子。この地におけるスマート農業化は近いかもしれません。

白メシ学園的88工程
その54: 高齢の農業者に向けたドローン操作のレクチャー

4.ため池に蔓延(はびこ)るヒシの駆除

まだまだ作業がありました。田んぼの水源として不可欠なため池に異常繁茂した、ヒシという水生植物の駆除です。菱形の葉からヒシと呼ばれるそうで、ただの浮き草ではなく、厄介なことに長い茎が池の底に続いているのだとか。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

手作りの錨(いかり)を付けたロープを池面に投げ、引っ張って根ごと抜く、という、まったくもって原始的な方法で駆除していきます。この錨は溶接が得意な知人に作ってもらったという農家さんの完全オリジナル製品です。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

見た目以上に体力が奪われる作業。限界を迎え、引き上げ作業にバックホーを導入したところ、これまでの労力はなんだったのだと思うほど、楽に引っ張ることができました。

白メシ学園的88工程

その55:ため池のヒシをオリジナル用具で駆除
その56:結局、重機にはかなわないことを知る

ヒシの間からはさまざまな生物が出てきました。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

それにしても、山際には多様な生き物が住んでいます。こちらは、なんと収穫を目前に控え、イノシシに荒らされて8割がだめになってしまった水田。防護柵の隙間をすり抜けて侵入したイノシシが、泥の上で転がって暴れまわったのだとか。自然界は甘くないことを思い知ります。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

こちらの田は2割ほどがイノシシに倒されてしまったとか。ビニール紐で囲うだけでも侵入が防げるそうで、人間と動物との知恵比べです。

白メシ学園的米作りの88手間・第5話

さらに、農家さんは毎日深夜2時に田んぼを訪れて空砲を撃っているとのこと。「収穫前にやられちゃ、たまったもんじゃない。ひでえじゃねえかい」という言葉が深刻さを物語っていました。

白メシ学園的88工程
その57:試行錯誤の獣害対策 

5.所感

今回も農業における昔ながらの知恵と創意工夫に感心しつつ、なんだかんだで手作業の重要性を実感しました。そして、常に自然界のさまざまな脅威と隣り合わせの農業のシビアな側面も痛感しました。

なお、今回、収穫適期の稲穂の見分け方も聞いたのですが、レポートが長くなってしまったので次回にご紹介します。

担当教員より/

一筋縄ではいかない農業の難しさと奥深さが伝わってきました。ちなみに、稲はガラス質の細胞体を含んでおり、それが肌に触れると痒みが発生するそうですよ。つまり、稲作では肌の露出を少なくすることが鉄則だと身をもって体験したのですね。このガラス質は腐敗しにくく土中に残るため、最近の研究で縄文時代後期にはすでに稲作が行われていたことがわかったようです。私も勉強になりました。

評価:米米草獣駆除